マスクによる皮膚炎(マスク肌荒れ)
マスクを着用する機会が多くなり、小さな子どもから高齢の方まで男女問わず、診察時に肌荒れやニキビなどの肌トラブルについて相談される方が増えています。
コロナの影響で、半年以上の長期に渡りマスクを着用するのは、初めての方がほとんどではないでしょうか。肌荒れが実際起きていたとして、なかなかマスクを外すことは出来ない状況になっており、ご来院される患者さまは常に多くいらっしゃいます。
そもそも、マスクをするとなぜ肌トラブルが起こりやすくなるのでしょうか。その主な原因として、次の3つがあげられます。
摩擦による刺激
マスクが肌に直接触れる部位は、摩擦による刺激から肌荒れやかぶれ(アレルギー性や刺激性接触性皮膚炎)を起こしやすくなります。
我々の皮膚の表面は角質というものに覆われていて、外部の刺激から守ってくれています。ところが毎日マスクの線維とこすれあうことで、その角質が少しずつ削られてしまいます。外部刺激から肌を守る「バリア機能」が低下してますます刺激を受けてしまうという、負のスパイラルを招くこともあります。
蒸れの影響
マスクの内側は吐く息で蒸れて高温多湿になり、ニキビを引き起こすアクネ菌などの細菌や雑菌が繁殖しやすくなっています。
肌の乾燥
マスクをつけているあいだは吐く息がこもっているので、肌が潤っているように感じるかもしれません。しかし、マスクを外すと一気に内側の水分が蒸発し、肌の水分まで同時に奪って逆に乾燥を引き起こします。肌が乾燥するとバリア機能が正常に働かなくなり、皮膚トラブルを招いてしまいます。
以上の3つの大きな原因があり、弱った肌は、これまで大丈夫だったはずのマスク自体が、刺激になってしまう可能性もあります。
マスクの線維だけでなく、洗って繰り返し使えるマスクの場合、繊維の間に残った洗剤の成分が刺激になってしまっている方もいるでしょう。
マスク皮膚炎の対策
1. 自分に合ったマスクを選ぶ
布やガーゼタイプのマスク(綿のものが望ましいです)だと肌への刺激を抑えられますが、感染拡大を防ぐうえでは不織布マスクのほうが効果を期待できるかもしれません。そのときの状況や肌の状態によって使い分けるとよいでしょう。不織布マスクを使う場合でも、同じ大きさの綿のガーゼを肌とのあいだに挟むと刺激が和らぎます。また、マスクが小さいと摩擦を起こしやすくなるので注意が必要です。
2. 汗をこまめに吸い取る
マスクの着用中は、熱がこもって汗をかきやすくなります。汗が肌に付着したままにしておくと、かゆみやあせも(汗疹)などの肌トラブルにつながるため、吸収性のよいタオルやガーゼでこまめに汗を吸い取りましょう。汗を吸い取る場合は、こすらないように軽く押してください。マスクが汗で湿った場合は、新しいものに交換することをおすすめします。また、マスクを洗う際の洗剤や柔軟剤の成分によって皮膚炎が悪化しやすくなる場合があるため、注意が必要です。
3. スキンケアで十分に保湿する
肌のバリア機能をきちんと働かせるためにも、十分な保湿が必要です。
帰宅後はすぐに手を洗い、清潔な手で洗顔料をしっかり泡立てて顔を洗いましょう。肌をゴシゴシこするのではなく、手ではなく泡でやさしく洗うことが大切です。
洗顔後はすぐに化粧水や乳液、クリームなどで保湿してください。暑い時期は汗や皮脂で肌がべたつくので、油分によるケアを控えている方もおられるかもしれませんが、肌の潤いには水分だけでなく油分も欠かせません。油分がクッションとなり、マスクの刺激も和らげてくれます。
4. 日焼け止めの刺激に注意する
すでに肌荒れを起こしている場合や、肌が敏感なときは、マスクで隠れる部位に日焼け止めを塗るのは避けたほうがよいでしょう。とはいえ、紫外線ダメージもバリア機能を低下させる要因となりますし、マスクで紫外線の影響を完全に防ぐことは困難です。つばの広い帽子をかぶったり、日傘をさしたりして、日焼け止め以外の方法でUV対策を行いましょう。
病院の受診が必要になるタイミングは?
肌トラブルをそのまま放っておくと、症状が悪化したり、あとが残ってしまったりする可能性があります。次のような場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
- ニキビができた
- 肌の乾燥がおさまらない
- 肌にかゆみがある
- 肌に痛みがある
- 肌に赤みが出た
ニキビは早期治療で早くキレイに治すことができるので、症状がひどくなる前の受診をおすすめします。
また、顔だけでなく、頻繁な手洗いや消毒の影響で手に肌トラブルが出ることもあるかもしれません。悪化すると慢性化して治りにくくなるため、手を洗った後はこまめにハンドクリームなどの保湿剤でケアして、気になる症状があれば専門医に相談しましょう。