【皮膚のSOS】“ただのブツブツ”が実は危険な病気のサイン⁉皮膚科医が徹底解説
こんにちは。茨城県古河市で皮膚科を開業しています医師の生垣英之です。皆さん、“ちょっとしたブツブツ”を見つけたとき、どうされていますか?『まあニキビかな』『そのうち治るだろう』と放っておくこと、ありますよね。でもそのブツブツが思いがけず危険な病気のサインだった、というケースがあるんです。
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実は、皮膚って“体の健康状態を映す鏡”だと言われているんです。皮膚は私たちの体の中で一番外側にある臓器です。臓器と聞くと心臓や肝臓を思い浮かべる方が多いですが、実は皮膚は“最大の臓器”なんですね。だからこそ、体の中で起きていることが表面に現れやすいんです。
たとえば肝臓や腎臓に不調があると、皮膚が黄色くなったり、かゆみが強くなったりします。貧血があると顔色が青白くなりますし、糖尿病では皮膚の感染症が起こりやすくなります。つまり皮膚は、“体の中の調子を外に映し出すスクリーン”のような役割をしているんです。そのため、皮膚表面にできたちょっとした変化に気が付くということは、体の重大な変化に気が付くのと同じであるともいえます。
なので今日は、“皮膚科医が教える危険なブツブツの正体”というテーマでお話しします。ぜひ最後までご覧いただいて、ご自身やご家族の健康に役立ててくださいね。
【危険なブツブツとは?】
一口に“ブツブツ”といっても、その原因は本当にたくさんあります。多くの方がまず思い浮かべるのはニキビや軽い湿疹だと思います。確かに、それらは比較的よくある皮膚トラブルですし、しばらくすると自然に治ってしまうこともあります。しかし一方で、同じように見える“ブツブツ”が、実は全身に広がる感染症の初期症状だったり、薬の副作用による発疹だったり、あるいは皮膚がんのサインだったということもあるのです。つまり、“見た目だけで判断するととても危険”だということです。皮膚は表面に出てくるためわかりやすい反面、同じような赤みやブツブツに見えても、その背景にある病気はまったく別物であることが少なくありません。たとえば、ただの湿疹と思っていたものがばい菌感染だったり、虫刺されのように見えて実はウイルス性の発疹だった、というケースもあります。
大切なのは、“見た目が似ていても中身は全然違うことがある”ということを知っておくことです。自己判断で『そのうち治るだろう』と放っておくと、症状が悪化したり、周囲にうつしてしまったり、最悪の場合は命に関わる病気につながってしまうこともあります。だからこそ、『これくらい大丈夫かな』と考えずに、少しでも不安を感じたら専門医に相談してほしいんです。皮膚科を受診することで、早期に原因を見極め、適切な治療を始められます。小さなブツブツだからと軽く見ずに、“体からのサインかもしれない”と受け止めることが大事なんです。」それでは実際に、“危険なブツブツ”の具体的な例を紹介していきましょう。皮膚科でよく出会うケースを中心にお話しします。
帯状疱疹
まず一つ目は“帯状疱疹”です。特徴的なのは、ピリピリした神経の痛みと一緒に赤いブツブツが帯のように出ること。体を縦に切って、片側のどちらかにに沿って出るのが特徴です。最初は『あれ?虫に刺されたかな?』と思うくらいの赤い点から始まることもあります。ですが、時間が経つと水ぶくれになり、強い痛みを伴います。ただし、はじめは痒みのみの場合もありますし、あまり痛みがない人もいます。放置してしまうと“帯状疱疹後神経痛”という厄介な後遺症が残ってしまい、何ヶ月も、場合によっては何年も痛みに悩まされる方もいらっしゃいます。早ければ早いほど治療効果が高い病気です。
帯状疱疹についてのブログはこちら
(https://ikegaki-hifuka.com/?p=4299)
(https://ikegaki-hifuka.com/?p=4755)
②2つ目はカポジ水痘様発疹症です。カポジ水痘様発疹症は、単純ヘルペスウイルスによって起こる急性の皮膚感染症です。通常の単純ヘルペスは唇や口のまわりに小さな水ぶくれを作る程度ですが、この病気ではウイルスが皮膚の炎症や湿疹の部分に広がり、全身に水疱性のブツブツの発疹を生じるのが特徴です。特にアトピー性皮膚炎を持つ患者さんでは皮膚のバリア機能が弱いために発症しやすく、乳幼児や高齢者、免疫抑制剤を使用している方や免疫力が落ちている方でも起こる可能性があります。症状としては、まず顔や首を中心に小さなボツボツの水ぶくれがたくさん出現し、しばしば体や手足にも広がります。水ぼうそうと似ていますが、より密集して出現し、赤くただれたり、かさぶたになったりします。ヘルペス特有のチクチク、ピリピリした痛みを伴うことが多く、強いかゆみを感じることもあります。また発熱や全身のだるさ、リンパ節の腫れを伴う場合があり、皮膚の症状だけでなく体調全体に影響が出る点がこの病気の特徴です。
放置すると重症化することがあり、特に注意すべき合併症として、ばい菌感染や眼の合併症があります。かき壊した部分に細菌が侵入すると「とびひ」や蜂窩織炎を起こすことがありす。眼に感染が広がると角膜炎や結膜炎につながり、視力に影響を及ぼすこともあります。免疫力が著しく低下している方では全身にウイルスが広がり、命に関わる危険もあるため注意が必要です。日常生活では、早期に受診することが何よりも大切です。急に小さい水ぶくれが広範囲に広がったときには自己判断せず、皮膚科を受診してください。また、ヘルペスウイルスは接触によって感染するため、タオルや食器を共用せず、発疹部分に触れた手はすぐに洗うなどの感染予防も必要です。特に家庭内に乳幼児や免疫力が弱い人がいる場合は十分な注意が求められます。アトピー性皮膚炎がある方は、普段から保湿や炎症のコントロールを行い、皮膚のバリア機能を守ることがこの病気の予防につながります。
水ぼうそう三つ目は水ぼうそうです。
小さな赤いブツブツや水ぶくれが、口の中や全身に出てくることがあります。頭部にもできます。子どもが発症すると、幼稚園や学校であっという間に広がります。実は大人がかかると重症化しやすく、高熱や強い全身倦怠感を伴うこともあります。『子どもがうつったら、親のほうが大変だった』なんてケースも珍しくありません。ただの発疹と思わず、周囲に広がらないよう早めに医療機関で確認することが重要です。
④ 皮膚がん
四つ目は“皮膚がん”です。黒っぽいシミのように見えるけれど形がいびつ、盛り上がっている、色がまだらになっている。そんなブツブツは要注意です。特に『だんだん大きくなってきた』『出血するようになった』などの変化がある場合は、悪性の可能性があります。シミやホクロと見分けがつきにくいので、患者さん自身が気づきにくいのも特徴です。早期に発見できれば治療で治る皮膚がんもありますから、“いつもと違うな”と思ったらぜひ皮膚科で確認してもらってください。
(https://ikegaki-hifuka.com/?p=3927)
⑤ 薬疹(重症型)
五つ目は“薬疹”です。薬を飲んだあとに体中に赤いブツブツが広がることがあります。軽症で済むこともありますが、全身に水ぶくれが広がり、目や口の粘膜までただれてしまうケースもあります。その場合は高熱を伴い、命に関わることもあるため、決して見逃してはいけません。『薬を飲んでから急にブツブツが出てきた』場合は、すぐに受診して服薬歴を医師に伝えてください。
⑥ マダニによる発疹
最後は“マダニによる発疹”です。キャンプや登山などのあとに、皮膚に赤い腫れやブツブツが出てきて、よく見ると小さなダニが食いついていた、なんてこともあります。無理に引き抜くと口の部分が皮膚に残ってしまうので注意が必要です。さらに怖いのは、マダニが媒介する“SFTS(重症熱性血小板減少症候群)”という感染症。発熱や倦怠感を伴い、重症化することがあります。野外活動のあとに発疹や体調不良があれば、早めの受診が安心です。マダニ感染症のブログは以前作ったものがありますので、そちらもあわせてご覧ください。
(https://ikegaki-hifuka.com/?p=104227)
このように、“ただのブツブツ”に見えても、その正体はまったく違う病気であることがあります。なかには放置すると命に関わるものもありますから、やはり早めの受診が大切なんです。
【危険サインの見分け方】
では、どんなブツブツが出たときに“これはすぐに受診した方がいい”と考えるべきなのか。ここでは、いくつかの危険サインを具体的にお伝えします。
急に広がっている
まずは、“急に広がっている”というサインです。昨日までは腕に数個だけだったのに、朝起きたら胸や背中にまでブツブツが広がっていた…
というケースは要注意です。単なる湿疹や虫刺されであれば、短時間で急激に全身へ広がることは少ないからです。感染症や薬疹の可能性もありますので、広がりのスピードに注目してください。
発熱や強い倦怠感を伴っている
次に、“発熱や倦怠感を伴っている”場合。ブツブツだけでなく、全身のだるさや高熱を伴うときは、体の中で炎症や感染が広がっている可能性があります。たとえば水ぼうそうや、カポジ水痘様発疹症による病気などがそうです。単なる皮膚のトラブルではなく、“全身に影響を与えているサイン”として見てください。
水ぶくれやただれを伴っている
三つ目は、“水ぶくれやただれ”です。小さな赤みから始まっても、次第に水ぶくれになり、やがて破れてただれてしまうようなケースは、感染症や強い炎症の可能性があります。帯状疱疹や重症薬疹のときによく見られます。皮膚のバリアが壊れてしまうと、そこからさらに細菌が入り込み、症状が悪化することもあります。
黒っぽい変色や形のいびつさ
四つ目は、“黒っぽい変色や形のいびつさ”です。ホクロのように見えても、色が濃くなったり、境界がギザギザしてきたり、盛り上がってきたりする場合は要注意です。皮膚がんのサインである可能性があります。特に“数ヶ月かけてじわじわ変化している”ときは、自己判断せず必ず専門医でチェックを受けましょう。
強い痛みを伴う
最後に、“強い痛みを伴う”場合です。単なる湿疹や軽いかぶれなら、強い痛みを感じることはあまりありません。帯状疱疹のように神経に沿った鋭い痛みが出る場合や、夜眠れないほどのかゆみがある場合は、皮膚の奥で強い炎症が起きている証拠かもしれません。体が発するSOSとして受け止めてください。
【さいごに】
このように、見た目のブツブツだけでなく、“どんなスピードで変化しているか”“全身の症状を伴っていないか”“色や形がおかしくないか”といった点に注目することが大切です。そして一番大事なのは、“少しでも不安を感じたら、迷わず皮膚科を受診すること”。早めに対応することで、重症化や後遺症を防ぐことができます。ブツブツが出たときは、まず“たかがブツブツ”と思わないこと。スマホで写真を撮って経過を残しておくと診察のときに役立ちますし、自己判断で市販薬を塗ると悪化する場合もあります。迷ったら、早めに皮膚科へ相談してくださいね。












