市販薬で治らないのはなぜ?皮膚科医が徹底解説!
皆さん「足の指の間がかゆい」「皮がむける」「爪が白く濁ってきた」そんなときどうしますか?多くの方がドラッグストアに行って、市販の水虫薬を手に取るんじゃないでしょうか。でも実は、「市販薬を塗ったけど治らなかった」という声、皮膚科には本当にたくさん届きます。今日は、なぜ市販薬で治らないことがあるのか、その理由と、皮膚科でできることを、分かりやすく解説していきます。
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1. 水虫ってどんな病気?
まずは水虫の基本から確認していきましょう。水虫というのは、実は「白癬菌」というカビの一種が、皮膚や爪に住みついて感染を起こす病気です。この白癬菌は、温かくて湿った環境が大好きなので、汗をかきやすい足や、通気性の悪い靴の中が絶好の繁殖場所になるんですね。だからこそ水虫は昔から「国民病」と呼ばれるくらい、誰にでも起こり得る身近な感染症なんです。最新の調査では、6人に1人が白癬菌を持っていると言われています。一口に「水虫」と言っても、実はいくつかのタイプに分かれています。タイプによって症状の出方や見た目がかなり違うので、「あれ、これも水虫なの?」と驚かれる方も少なくありません。
まず1つ目は趾間型。足の指と指の間に起こるもっとも一般的なタイプです。
皮膚がジュクジュクしたり、ふやけたようになってかゆみが出たりします。夏の蒸れや汗で悪化しやすく、「足がかゆい=水虫」というイメージは、このタイプから来ています。ただ、かゆみはでない人もいます。診察室では、これかゆいから水虫ですよね?とか、かゆみがないから水虫ではないですよね?と聞かれる事が多いですが、かゆいかどうかで水虫かどうかを診断するわけではありません。
2つ目は小水疱型。土踏まずや足の側面に小さな水ぶくれがポツポツと出るタイプです。
かゆみが強い場合もあり、つい掻いてしまうと水ぶくれが破れて痛みやしみる人もいます。湿疹や汗疱と非常に似ているため、見た目だけで自己判断するのは危険です。
3つ目角化型。足の裏全体がカサカサ、ゴワゴワして皮が厚くなるタイプ。
粉をふいたように白く見えたり、かかとがひび割れて痛くなることもあります。「乾燥かな?」と勘違いしてしまう方がとても多く、気づかないうちに家族へうつしてしまう原因にもなります。
4つ目は爪白癬。これは爪に白癬菌が入り込むタイプです。
爪が白や黄色に濁ったり、厚く変形してボロボロになっていきます。見た目が気になるだけでなく、靴を履くと痛みが出たり、放置するとどんどん爪全体に広がってしまう厄介なタイプです。つまり、「水虫」といっても症状はいろいろで、人によってまったく違う表情を見せる病気なんですね。さらにやっかいなのは、水虫と似た症状を起こす病気が他にも多いということ。たとえば、単なる湿疹や汗によるかぶれ、アトピー性皮膚炎、さらには掌蹠膿疱症など、見た目が非常に似ている病気があります。そのため「足がかゆいから水虫だろう」「皮がむけてるからきっと水虫だ」と自己判断してしまうと、まったく違う病気に市販薬を塗ってしまい、逆に悪化させてしまうことも少なくないんです。これが、水虫を正しく診断するのが意外と難しい理由のひとつなんです。
2. 市販薬で治らないことがある?
「水虫の薬ならドラッグストアでも買えるし、それで十分じゃないの?」そう思っている方、けっこう多いんです。確かに軽い水虫であれば市販薬で改善することもあります。でも実際には「塗ってみたけど良くならなかった」「一時的にかゆみは引いたけど、またぶり返した」という方が本当にたくさんいらっしゃいます。では、なぜ市販薬では治らないケースがあるのでしょうか?
① そもそも水虫じゃなかった場合
まず多いのが「水虫だと思っていたら、実は全然違う病気だった」というケースです。足の皮がむけたり、かゆみがあると「きっと水虫だ」と思い込んでしまいますよね。先ほど言ったように、別の皮膚病であることも少なくありません。当然ながら、水虫用の市販薬を塗っても効果はゼロ。むしろ症状が悪化してしまうことさえあります。
② 菌が奥深くに潜り込んでいる場合。
他には水虫は水虫でも「菌が皮膚の奥や爪の中に入り込んでいる」タイプです。たとえば角化型水虫や爪水虫の場合、表面に薬を塗っても菌が潜んでいる深い部分にまでは届きません。結果として「毎日しっかり塗っていたのに治らない」ということが起きるんです。特に爪水虫は爪の厚みに守られているので、市販薬で完治させるのはほぼ不可能なんですね。
③ 間違った塗り方や短期間でやめてしまう
「かゆみが引いたからもう大丈夫」と自己判断して数日で薬をやめてしまう人も少なくありません。でも実は、水虫の菌はとても粘り強くて、症状が落ち着いても皮膚の奥にはまだ残っていることが多いんです。そのため、きちんと決められた期間を守らずにやめてしまうと、また再発してしまいます。
④ 市販薬の限界。
もちろん市販薬も悪いわけではありません。ただし、薬の成分や濃度には一定の限界があります。軽い水虫であれば対応できても、進行したタイプや爪水虫になると、市販薬だけではどうしても力不足になってしまうんです。
⑤炎症が強い場合
最後ですが、これも非常に多いです。真っ赤になってしまっている水虫の場合、水虫の薬を塗っても悪化してしまう事があります。一度ステロイド外用剤などで、炎症をおさえてから、水虫の薬をぬらないと良くならない場合があります。あと、2次的にばい菌が入ってしまった場合もばい菌の治療をしないと良くなりません。こうした理由から、「市販薬を塗っても治らない」という状況は珍しくありません。大事なのは「市販薬で良くならないときは早めに皮膚科へ行く」という判断をすることなんです。
3. 皮膚科での正しい診断と治療。
では、「皮膚科に行くと具体的に何をしてくれるの?」と気になる方も多いと思います。「市販薬で治らなかったのに、病院ではどう違うのか?」ここをしっかり理解していただくと、受診するハードルも下がりますよね。
①顕微鏡での診断。
まず大きな違いは、目で見て診断するのではなく、顕微鏡で白癬菌を確認するという点です。皮がむけている部分の皮膚の一部や、爪のかけらを少しとって、特殊な薬で処理したあと顕微鏡で観察します。すると、白癬菌が糸状に広がっている姿が見えるかどうかが分かります。このステップがとても重要で、「本当に水虫なのか?」「それとも別の病気なのか?」を正確に判断できるんです。自己判断との最大の違いはここですね。この検査は保険も効きますし、結果も5分程でわかります。検査の時の注意点があります。1週間程、水虫の薬を塗らない状態で検査したほうが検査結果が正確にでます。なので、水虫の薬を1週間ほど塗らない状態で来院していただくのが一番良いです。今度は治療の話しをします。
②外用薬治療。
皮膚科で処方する外用薬は、成分の選択肢が広いです。形状もクリームだけでなく軟膏も処方する事ができます。あと、市販薬だと、かゆみ止めの成分などが入っていることが多いですが、逆にかぶれてしまう事があります。皮膚科では、症状の部位や広がり方に合わせて、最適な薬を選びますし、「どのくらいの量を、どの範囲に塗ればいいのか」という具体的な指導も受けられます。たとえば「かゆいところだけ塗ればいい」と思っている方も多いのですが、実際には症状が出ていない周囲にも菌が潜んでいるので、広めに塗ることが大切なんです。足の場合、片足だけ塗っている方も多いですが、両足全体にぬった方がいいです。こうした正しい塗り方を知るだけでも、治りやすさは全然違ってきます。
内服治療(爪水虫)爪白癬や角化型白癬は、外用薬だけではなかなか治りません。皮膚科では、飲み薬を使うことができます。市販薬ではどうしても爪の中まで届かないので、この内服治療ができるのは病院ならではの大きなメリットです。ただし、飲み薬はだれでもできるわけではありません。他に飲んでいる薬との飲み合わせや肝臓が悪い人は飲めません。治療期間。水虫は「薬を塗ったらすぐ治る」という病気ではありません。皮膚のターンオーバーや爪の生え変わりに合わせて、一定期間しっかり治療を続ける必要があります。皮膚の水虫であれば数週間〜数か月で改善するケースが多いですが、爪水虫の場合は半年以上の根気強い治療が必要になる事が多いです。ここで大切なのは「症状が軽くなっても、自己判断で中断しない」ということ。最後まできちんと治療を続けることで、再発のリスクを大きく減らせます。
4. 再発を防ぐためにできること。
水虫は「再発しやすい病気」としても有名です。だからこそ、日常生活での工夫もとても大切になります。
- 毎日靴下を替える
- 靴は2足以上を交代で履く
- バスマットやスリッパを家族と共有しない
- 足は毎日しっかり洗って乾燥させる
- 家族に水虫がいたら、みんなで治療する「自分だけ治しても、また家族からうつる」というケースも多いので、家族全体で対策する意識が必要です。
5. まとめ
水虫は「市販薬で治る人もいるけれど、治らない人も多い病気」です。「長年悩んでいたけど、もっと早く皮膚科に来ればよかった」そう言う患者さんは本当に多いです。もし今「市販薬を塗ってるのに治らない」「爪が白く濁ってきた」そんな症状がある方は、自己判断せずに皮膚科を受診してくださいね。