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帯状疱疹の増加

[2025.03.17]

今回は帯状疱疹という病気がなぜ近年増え続けているのか、皮膚科医の所見を交えてお話しできればと思います。 こちらのブログの内容は以下のYouTubeでもお話ししていますので、よろしければごらんください。

皆さん「帯状疱疹」という病気、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?最近はテレビのCMでも目にすることが増えましたね。症状は、ピリピリ、ズキズキ、チクチクする肌の痛みや、水ぶくれを伴う赤い発疹が帯状に現れることが特徴の病気です。発疹は主に体の左右のどちらかにみられ、1週間くらいでかさぶたになります。重症化すると入院治療が必要になる場合もある病気です。80歳まで3人に一人がかかると言われていて、とても身近な病気ですよね。この病気は小さい頃にかかった【みずぼうそう】とおなじウイルスが原因で起こります。みずぼうそうは顔や体に水疱と呼ばれる水ぶくれや膿疱といって膿の水ぶくれがたくさんできて、発熱などの症状がある、保育園なんかでよく流行る病気です。この幼い頃にかかったみずぼうそうのウイルスが神経節というところに残っていて、おとなになったときに、様々な要因で帯状疱疹となって現れます。日本人の大人だと、約9割の方が帯状疱疹の原因のウイルスを持っていると言われるため、これをみているほとんどの方が帯状疱疹になる可能性があるといえますね。

帯状疱疹について詳しく知りたい方は、以前ブログを出しているので、そちらをご覧ください。

そんな帯状疱疹ですが、近年なってしまう人が増えています。

こちらの図を見てください。こちらの図は1997年からの帯状疱疹発症率の増加率ですが、すべての年代で帯状疱疹患者の増加が見られます。私は20年以上皮膚科医をしていますが、体感としても帯状疱疹の方を多く見るように感じています。なぜこのように発症率は増えているのでしょうか?先ほどもお話したように帯状疱疹は痛みが強く水ぶくれを伴う赤い発疹があり、重症化すると入院治療も必要となる厄介な病気です。発疹は胸やお腹、背中など上半身に多く現れることもおおいですが、顔の近くに発疹ができることもあり、目の近くにできれば角膜炎や結膜炎を引き起こしたり、まれに耳鳴りや難聴、顔面神経麻痺などの合併症が出現することがあります。目や耳の近くにできれば、皮膚科だけでなく、眼科や耳鼻科にかかる必要もあります。

特に後遺症である帯状疱疹後神経痛は、長期間痛みが続いてしまう悩ましいものです。

50歳以上で帯状疱疹になってしまった方の5人に1人は帯状疱疹後神経痛になってしまったという報告があります。そんな増加している帯状疱疹の原因について私の考えをお話ししたいと思います。

原因

1.高齢化社会

まず原因のひとつ目として考えられるのは、高齢化社会となっていることです。帯状疱疹になった患者さん全体のうち、約7割が50歳以上です。

高齢化社会において帯状疱疹が増加している理由は、主に免疫力の低下に関連しています。帯状疱疹は、先ほど言ったように水ぼうそうにかかったことのある人の体内に潜んでいる水痘帯状疱疹ウイルスが、免疫力の低下により再活性化することで発症します。年齢を重ねるにつれて、免疫システムの働きが弱まり、体が感染やウイルスの再活性化に対する抵抗力を失いやすくなります。

高齢者は若い頃に比べて免疫細胞の数が減少し、またその機能も低下します。これにより、体内に潜んでいた水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化しやすくなり、帯状疱疹が発症しやすくなるのです。さらに、高齢者は糖尿病など、免疫力をさらに低下させる持病を抱えていることも多く、これも発症リスクを高める要因となっています。

また、高齢者の体力や健康状態の変化に伴い、帯状疱疹が発症した際に症状が重篤化するリスクも高まります。帯状疱疹後神経痛(PHN)などの合併症が発生しやすくなり、生活の質を大きく損なうことがあります。したがって、高齢化社会が進むにつれて、帯状疱疹の発症が増加しているのは、免疫力の低下とその結果としてのウイルス再活性化が一つの原因であると言えます。

2つ目がストレスと免疫力の低下

現代社会では、ストレスが増加していることが多いです。ストレスは免疫系に悪影響を与え、免疫力を低下させることがあります。免疫力が低下すると、水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化しやすくなり、帯状疱疹の発症リスクが高まります。

 3つ目が水ぼうそうの予防接種の普及と影響が考えられます。

先ほどのグラフを見てもらうと、2014年以前は緩やかな右肩上がりだった増加傾向もそれ以降はかなり急激に増えているのがわかりますね。帯状疱疹は幼いころにかかった水疱瘡のウイルスが原因と話しをしましたが、2014年より定期接種が始まった子供の水ぼうそうワクチンの存在が帯状疱疹増加とのつながりがあると考えられます。どういうことかといいますと、予防接種をすることにより子供たちが水ぼうそうに自然に感染する機会が減っています。それまで水ぼうそうに自然に感染していた子供から、家庭内でウイルスを大人はもらい、小さいころに感染しただけだった水ぼうそうのウイルスを子育て世代の親が感染し、その時点でまたウイルスに対して免疫が強化されていたと考えられます。つまり、水ぼうそうの子供と接することで帯状疱疹予防のブースターのようになっていたと考えられます。このとき免疫によって2014年以前は帯状疱疹を発症する確率が少なかったのだと考えられます。

もちろん水ぼうそうは子供にとって大変な病気です。ワクチンによって確実に子供たちの水ぼうそう罹患率というのは下がっており、水ぼうそうで苦しむ子供の数は減っています。なので、水ぼうそうワクチンが悪いということはなく、子供たちからもらう免疫が減った分、大人は大人で帯状疱疹の予防をしていかなくてはいけないよね、ということです。

あとそのほかの原因として、帯状疱疹の増加に伴い、注意喚起のテレビCMが多くみられますよね。帯状疱疹という病気を知ることで、いざ症状があらわれたときに「これか!」となり病院に来る人が多くなる。つまり健康への意識の向上ともかんがえられますね。

1.高齢化社会、2.ストレス社会、3.水ぼうそう罹患者の減少、また健康意識の向上。

これらの要因が組み合わさって、近年の帯状疱疹の増加傾向に寄与していると考えられます。考えられる大きな原因をお話しましたが、どれも自分自身で改善できるかといわれるとなかなか難しいものがありますよね。大事なのは帯状疱疹自体の予防と、50歳を超えたらワクチンを打つ、発症してしまったときにできるだけ早く病院での治療を受けることとなります。ピリピリした痛みがあり帯状に発疹が発現した場合等、帯状疱疹の疑いがあるときは、すぐに病院に行きましょう。帯状疱疹の治療に使われている抗ウイルス薬は、皮膚症状が現れてからできるだけ早めにに投与する必要があります。また、帯状疱疹を発症して72時間以内に薬の投与を行うことで抗ウイルス薬は効果を発揮します。

そのため、帯状疱疹が疑われる場合や発症したら、必ず3日以内に病院へ行くことが重要です。

今回の話し、帯状疱疹は様子見しない 勝負は「はじめの3日間」というのは私の書いた本の『皮膚トラブルの治し方大全』にも書いてあります。他の疾患もいっぱい書いてありますので、是非ご覧になってください。

詳しくはこちら

院長
生垣 英之
診療内容
一般皮膚科、美容皮膚科、小児皮膚科、アレルギー科
TEL
0280-31-1217
※自由診療予約はweb予約をご利用ください
住所
〒306-0003
茨城県古河市緑町54-33
最寄駅
JR宇都宮線古河駅

診療時間

診療時間
9:30~13:00
14:30~18:30

▲:土曜午前の診療時間は、9:00~13:00
★:土曜日午後は、14:00~17:30(完全予約制)の手術、レーザー治療
※受付開始は、診療開始30分前(平日は9:00から、土曜日は8:30からです。)
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