増加する感染症【梅毒】の症状・感染経路・治療・検査について皮膚科専門医が徹底解説
皆さん梅毒という病気は聞いたことがありますでしょうか?
最近ニュースで取り上げられることも多いこの病気ですが、日本では1948年から梅毒の発生について報告の制度があります。
報告数は、年間約11,000人が報告された1967年以降、減少していました。ところが2011年頃から報告数は再び増加傾向となり、2021年以降大きく増加しています。
2023年には上半期で7,000人を超える報告があり、注意が必要な病気と言えます。
今回はそんな梅毒のよくある疑問について、皮膚科医の視点からお話したいと思います。以下の内容はこちらのYouTubeでもお話しています。あわせて御覧ください
【目次】
梅毒の症状
梅毒の感染経路
日常生活でうつるか
梅毒の予防
梅毒の検査
梅毒とHIV
梅毒の治療
皮膚科医からのお願い
余談
まとめ
【梅毒の症状】
まずは梅毒の症状についてお話したいと思います。
梅毒は、梅毒トレポネーマによる主に性行為により感染する性感染症ですが、症状には段階があり、第1段階から第3段階に別れています。
第一段階
感染からだいたい3週間から6週間後くらいに、感染が起きた場所(通常は性器、肛門、口など)に赤い発疹や潰瘍が起こります。潰瘍というのは、皮膚がえぐれて穴があいてしまう状態です。
聞いただけでも痛そうですが、痛みがあまりないのが特徴です。
これは、3~4週間くらいで自然に治ります。その後、症状が消えてしまうため、感染が進行する前に気づきにくい場合があります。
これが第1期梅毒といいます。
第二段階
感染から約3ヶ月後の潰瘍が治った後、全身に広がる症状が出現します。
発熱、倦怠感、リンパ節の腫れ、全身の発疹が見られます。
全身の皮疹を梅毒疹と言いますが、ばら疹と言って、体や四肢内側に赤い斑点が見られたり、丘疹性梅毒と言ってばら疹にやや遅れて顔面、体幹、外陰部、手のひらあしの裏に小さい赤いボツボツができたりします。
手のひらあしの裏ではガサガサした赤みがでることがあります。これを梅毒性乾癬とよぶことがあります。
他には扁平コンジローマと言って、肛囲、外陰部に生じるジメジメした灰色のボツボツができます。
他には、黄色のボツボツができる膿疱性梅毒や、色が抜ける梅毒性白斑、頭部の毛が抜ける梅毒性脱毛などがあります。
非常に多彩です。良くなったり、悪くなったりを繰り返していきますが、感染は進行します。
これが第2期梅毒です。
第三段階
未治療の梅毒が進行した場合に発生することがあります。
数年または数十年後、結節性梅毒と言って、かなり酷い皮疹がでたり、血管や神経の重篤な合併症が発症する可能性があります。
これが第3、4期梅毒です。ただし、ここまで行く方は現代では非常にまれです。
【梅毒の感染経路】



【梅毒日常生活で家族にうつるか】
日常生活で家族などにうつるのかという質問をうける事があります。
先程お話ししたように、梅毒は、通常、性的接触感染する性感染症ですので、日常生活で性行為をしない家族や同居人に直接感染することはほとんどありません。もちろんキスも含めた性交渉がある場合は、感染リスクはあります。
また、お風呂でうつるかという質問をうけることもありますが、梅毒の人と一緒に入浴しても感染のリスクは低いです。
傷などのない健康な皮膚状態であれば、梅毒は体内に侵入できません。
可能性があるとすれば、肛門に病変がある方が座ったバスチェアを介して感染するリスクはわずかにあるかもしれませんが、洗い流せば感染の可能性を下げることが可能です。
また、感染する可能性はかなり低いと思いますが、銭湯や温泉、サウナなどの場所では裸のまま直接床に座ることは避けた方が無難です。
そのような場所で、バスチェアを使用する際はお湯で流したり、タオルを敷くなどして性器が直接触れないように心がけるのは良い事です。
【梅毒の予防】
先程お話ししたように、主に性行為にてうつりますので、まずは避妊する事が大事です。
具体的には、コンドームを使用するという事ですね。ただ、コンドームの使用は感染リスクを軽減するのに役立ちますが、100%の防御効果を提供するわけではありません。
あと、行為のあとに触れた部位をシャワーで洗い流したり、行為後なるべく早く排尿することです。これは男女問わず有効です。
【梅毒の検査】
梅毒の検査は、いくつか方法がありますが、主に血液検査でわかります。
感染のごく初期は血液検査の結果が正確に出ないため注意が必要です。
病原体が血液内に侵入し、それに反応して抗体というものができて初めて、正確な検査結果が出るので、感染直後や、病変ができた直後には陽性とならないことがあります。
時間を空けて血液検査をする場合もあります。あとは、陽性とでても治療が必要ない場合もあり、治療が必要かどうか決めます。
【梅毒とHIV】
HIVに感染していると梅毒の感染リスクが高くなり、同様に梅毒に感染しているとHIVの感染リスクが高くなるとされています。
HIVと梅毒の両方に感染(重複感染)していることは、珍しいことではなく、特に梅毒によって性器に潰瘍性の病変がある場合は、感染確率が上昇します。梅毒と診断した場合、HIVの検査もする事があります。
【梅毒の治療】
梅毒の治療は、抗生剤であるペニシリンの内服薬や注射があります。
ペニシリンにアレルギーがある場合は代替薬を使用することもあります。
梅毒が治ったかどうかは定期的に血液検査をして、判断します。
ちなみに、抗生剤を投与して、数時間で発熱や倦意感などの一過性の風邪っぽい症状や皮疹の増悪を認めることがあります。
これはJarisch-Herxheimer(ヤーリッシュ-ヘルクスハイマー)反応と呼ばれ、抗菌薬によって梅毒トレポネーマが大量に死滅・破壊されて、内部の毒素が血液に混入することが原因と考えられています。
この症状は通常、1日で自然に軽快することが多いです。薬疹と間違えて薬を中止しないようにお願いします。
【皮膚科医としてお願いしたいこと】
以上で梅毒の説明はおしまいです。冒頭でも話しましたが、非常に梅毒の感染が拡大しています。
ここで2点お願いしたいことがあります。
1つ目
症状がない変な皮疹が出た時に、病院にかかってほしいという事です。この病気は、かゆみなどの症状がでず、自然によくなることがあるので、医療機関を受診しない人がいます。梅毒は治る病気です。必ず医療機関を受診しましょう。
2つ目
病院にかかる際に、不特定多数の方と性交渉をしたり、風俗店に行ったり働いていることを隠さずに医師に伝えてください。もちろん典型的に皮疹がでれば診察しただけで、梅毒の可能性を考え検査することもありますが、説明したように梅毒の皮疹は非常に多彩であるため、一見するとわからない事もあります。その場合、感染リスクが高いことを素直に言っていただけると非常にありがたいです。性感染症というイメージから、言いづらい気持ちはわかります。ですが、正確な診断のため、是非ともお願いします
【余談】
余談ですが、以前梅毒の検査をしようとしたら、絶対にかかってないから検査しないでくれと言われて怒られた事があります。
患者さんのもつ症状から梅毒の可能性もあると考えなんとかお願いして検査を受けてもらいました。
診察をして疑わしい病状があれば検査をするのが、鉄則なので、検査をお願いしても、どうかおこらないでください。そこも協力お願いします。
ちなみに最終的にはその患者さんの検査結果は陽性でした。
【まとめ】
現在感染が拡大中の梅毒ですが、梅毒は治る病気です。また、自衛し感染を防ぐこともできる病気です。一人ひとりが病気に対して危機感を持ち、これ以上の感染を増やさないよう注意していく必要があると思っています。
また、かかってしまったときに病気の進行をさせないための早期発見もとても重要になってきます。
正確な情報をいただかないと診断が難しい場合があります。
ぜひ医療従事者の問診には正しく答えていただくようにおねがいします。

信州大学皮膚科 入局
佐久総合病院皮膚科
信州大学皮膚科
長野赤十字病院皮膚科(科長)
大宮皮膚科クリニック院長
こだま皮膚科院長
古河いけがき皮膚科 開院
皮膚科診療歴20年以上。年間3万人以上の診察を行い地域医療に貢献。YouTubeでは皮膚科疾患について詳しく解説をしています。
- 院長
- 生垣 英之
- 診療内容
- 一般皮膚科、美容皮膚科、小児皮膚科、アレルギー科
- TEL
- 0280-31-1217
※自由診療予約はweb予約をご利用ください - 住所
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