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糖尿病と皮膚病変:皮膚科医が教える知っておきたい8つの症状

[2024.06.18]

今回は糖尿病の皮膚病変について話したいと思います。なぜかというと先日来た患者さんが糖尿病を健康診断で指摘されているのにもかかわらず、放っておいて足の指の皮膚がえぐれたり、黒くなった状態で私のクリニックに受診されたからです。すぐに総合病院に紹介としました。糖尿病は放っておくと恐ろしい病気ですので、その周知のために動画をとりました。まず糖尿病は、膵臓から出るインスリンというホルモンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖(血糖)が増えてしまう病気です。
このブログでは、糖尿病に伴う皮膚病変を8つ皮膚科医の立場から解説いたします。

 

まずそれぞれの病気の前に糖尿病によって皮膚にどのような影響がでるかを話します。まず糖尿病が進行すると、細かい血管の血行障害が起きたり、免疫が下がって感染症にかかりやすくなります。他には末梢神経障害と言って、しびれや感覚の異常がおきやすいです。細かい血管や体の末端の神経が関与しているので、一番症状がでやすいのが、心臓から一番遠い部分である、足になります。なので、糖尿病の影響が一番でやすい足の症状を中心にお話ししたいと思います。ちなみにみなさんの体で一番負荷がかかるのはどこですか?そう足です。全体重を支えていますよね。走る時や歩く時に特に足の親指に一番負荷がかかります。そうなると傷ができやすいんです。みなさんころんだ時に、浅い傷なら自然に治ってきますよね?あれは、血の流れがしっかりしているからです。糖尿病の方に傷が出来ると血行障害があるので、傷が治りにくくなってしまいます。加えて、ばい菌が入りやすい状態になっているので感染症にかかりやすくなってしまいます。さらに足の感覚の異常があるので、自分で気づきにくくなってしまって、重症化することが多いんです。それを踏まえて糖尿病による皮膚病変をお話ししていきます。

広範囲の体部白癬・爪白癬(水虫)

1つ目は広範囲の体部白癬や爪白癬です。白癬って聞き慣れない言葉だと思いますが水虫の事です。よく患者さんにも聞かれますが、「水虫があるから自分は糖尿病ですか?」といわれますが、結論から言うと必ずしもそういうわけではないです。水虫が治りにくかったり、広範囲に水虫の皮膚病変があるときに糖尿病の可能性がありますよ。という事です。爪の水虫の場合は、糖尿病の人の方がなりやすいと言われています。足の水虫だけの場合については、糖尿病の人の方がなりやすいというデータがあったり、あまり関係ないというデータがあったりで、あまりはっきりしません。なので、水虫だからすぐに糖尿病だよという事ではありません。ちなみに水虫かどうかは真菌検査といって、皮膚を一部とって顕微鏡で見るとわかります。

足の疣贅状胼胝状病変(タコ)

2つ目は、足の疣贅状胼胝状病変です。なんか難しい言葉がでてきたと思う方が多いと思いますが、足にイボみたいなタコができますよって事です。タコというのは、反復する刺激のために皮膚の表面が硬く盛りあがったものの事です。要するに足の皮膚が硬くなり盛り上がった状態です。これも水虫と同じでタコがあるから糖尿病だよっていう事はないです。糖尿病の方にできるタコは通常のタコと違って、かなり大きくさらにギザギザしてきて、イボみたいになります。その状態の場合に糖尿病の可能性がでてきます。

糖尿病性水疱

3つ目は糖尿病性水疱と言って、足などに水ぶくれが急にできてしまう病気です。水ぶくれの周りに赤みがないのが特徴で、あまり痛みやかゆみがありません。数時間から1晩で一気に水ぶくれができてしまいます。これも糖尿病による血行障害などが原因と考えられています。ここで注意ですが、水ぶくれができたからといって、糖尿病というわけではありません。水ぶくれの原因は多数あります。過去に水ぶくれのブログがありますので、リンクを貼っておきます。(その水ぶくれ潰す?潰さない?)あくまで、糖尿病でも足に水ぶくれができることがありますよ、という話しです。

Dupuytren拘縮

4つ目はDupuytren(デュープリン)拘縮と言って、手のひらなどに、硬いしこりができてしまう病気です。手のひらの4番目と5番目の指の近くに出来ることが多くて、大きくなってくると、指が引きつってしまいます。足の裏にもできることがあります。手や足の皮膚の中のしこりは、他の病気でもできる事はありますが、これは自然には良くならないので範囲が広がってくる場合は注意が必要です。

インスリンボール

5つ目はインスリンボールです。糖尿病がひどくなってくると、先程話したインスリンというホルモンの注射を皮膚からする治療が必要になります。繰り返し自分で自分の皮膚に注射を打たないといけないのですが、同じ場所に打つ事を繰り返す事によって皮膚の中にしこりができる事があります。このしこりがつまみやすくて注射が打ちやすく、しかも痛くないので、同じ場所に繰り返し打ってしまう方がいます。この皮膚の中のしこりがインスリンボールと言われるものです。似たようなもので、あまり硬さがなく柔らかい皮膚の中にしこりが見られるものがあります。これはリポハイパートロフィーと言われるしこりです。違いはインスリンボールはアミロイドの沈着、リポハイパートロフィーは脂肪が肥大すると言われていますが、そこは専門家でなければ気にしなくて良いです。問題は、そこのしこりに打っているとインスリンの効果が弱くなり、糖尿病の治療がうまくいかなくかる事です。糖尿病の治療としてインスリンを打っている人で打った部位にしこりがある人は是非インスリンを処方している先生にご相談ください。

色素性痒疹

6つ目は、色素性痒疹です。胸や背中などに、かゆみを伴った網目上の皮疹が出現する病気です。この病気は糖尿病だけではなく、過度のダイエットによっても起こります。極端なダイエットをしている人で、胸や背中に網目状の赤いぼつぼつがでてきた人は必ず病院にかかってください。そのダイエットは危険な可能性がありますよ。

糖尿病性潰瘍・壊疽(足の指先が抉れたり黒くなる)

7つ目は糖尿病性潰瘍・壊疽です、また難しい言葉がでてきたと思っている方もいると思いますが、潰瘍というのは、皮膚がえぐれる事で、壊疽というのはその潰瘍が治らず皮膚が死滅し、黒色に変色することです。一番最初に話したように足の親指に多いですが、傷が治りずらく、血の流れも悪く痛みも感じづらくなることによって、皮膚がえぐれて、黒くなってしまいます。よく、患者さんから「皮膚が黒く腐ってくると危ないんでしょ?」と言われますがまさにこの状態です。この状態になると感染のリスクも非常に高く、総合病院での治療が必要になります。

壊死性筋膜炎・ガス壊疽

最後は、壊死性筋膜炎やガス壊疽です。聞き慣れない言葉だと思いますが、とても危険な病気で命に関わります。先ほどから繰り返しているように糖尿病が悪化すると免疫力が低下する事によって、皮膚の感染症になりやすくなります。この病気はばい菌による細菌感染症の最重症の病気です。ざっくり言うと皮膚は表面から皮膚、脂肪、筋肉、骨で構成されています。壊死性筋膜炎は筋膜を、ガス壊疽は筋層内の感染症になります。皮膚の深い所の感染症なので、重症化するリスクが非常に高いという事です。外科的に筋肉まで切らないと良くならない事が多く、救急対応ができる大きな病院での治療が必要になります。本当に恐ろしい命に関わる病気です。

まとめです。糖尿病による皮膚症状を8個あげました。糖尿病は日本人の5人に1人がかかっていると言われる国民病と言えます。あまり症状がない方も多いため、そのままになっている人も少なくないと思います。糖尿病では、かなり血糖値が高くなければ症状が現れません。高血糖における症状は、喉が渇く、水をよく飲む、尿の回数が増える、体重が減る、疲れやすくなるなどです。健康診断で指摘されたり、症状が当てはまるような方は是非、内科の先生に相談してみてください。冒頭に話した足の指の皮膚が、黒くなってしまった患者さんにもなんで内科行かなかったのですか?と聞きましたが、症状がないから指摘されたけど様子みていました、と言っていました。実はあまり言いたくないのですが、自分自信も年々血糖値が上がってきていて、気をつけています。血糖値を指摘されている方、お互いに運動・食事に気をつけていきましょう。

この記事を執筆した人
生垣英之
生垣英之

信州大学皮膚科 入局
佐久総合病院皮膚科
信州大学皮膚科
長野赤十字病院皮膚科(科長)
大宮皮膚科クリニック院長
こだま皮膚科院長
古河いけがき皮膚科 開院

皮膚科診療歴20年以上。年間3万人以上の診察を行い地域医療に貢献。YouTubeでは皮膚科疾患について詳しく解説をしています。

院長
生垣 英之
診療内容
一般皮膚科、美容皮膚科、小児皮膚科、アレルギー科
TEL
0280-31-1217
※自由診療予約はweb予約をご利用ください
住所
〒306-0003
茨城県古河市緑町54-33
最寄駅
JR宇都宮線古河駅

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